快走じじいの回想録

北の大地、南の島 旅の思い出をゆる~く。・・・時々今

田中邦衛さんを偲んで Ⅱ 拾って来た家

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   3月24日は、田中邦衛さんの命日

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雪子おばさんの家

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蛍と快の家として建て始めたが

中畑のおじさんのたっての頼みで娘のすみえさんとダンナさんの新居になる。

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 北の国から 2004

    純と結の家

        倉本 聡

 

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小さな事件は色々あった。でもそれは、どこの家庭でも起こるような事々で取り立てて人に云うような話じゃない。

2002年冬。僕は結と結婚した。

その時、それからその後のことを、実は今あんまり思い出したくないんだ。

結婚と同時に僕らは麻町にアパートを借り

 

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麓郷を離れて富良野の町に住んだ。中畑のおじさんも成田のおじさんもシンジュクさんもクマさんも結婚式にさえ呼ばなかった。そのことで僕らはまわりの人々から陰で恩知らずと云われていたらしい。でも。僕は僕なりに結婚ということを、新しい家庭を創るという夢を誰の手も借りず誰に迷惑もかけず二人っきりのこの世で初めて純粋な?業にしたかったんだ。多分そのことこそ僕らにとって出航の仕方だと思っていたんだと思う。だから僕らの結婚式も僕ら二人だけの考えで進めた。式場は僕らの2DKのアパートで、参加してもらったのは父さんと雪子おばさんと、それと羅臼のトドだけだった。披露宴も一切しなかった。この三人にだけ来てもらえば十分だと、有頂天の僕らは思いっきり信じていた。埼玉の方にいる蛍や正吉には、金がかかるから来ないで良いと云った。

 

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その晩、僕らと別れた父さんとトドが、くまげらで飲んで何故か荒れ狂い、中畑のおじさんや成田のおじさんやシンジュクさんまで呼び出して大暴れをし、ふすまを何枚も叩きこわしたという話を後できいたときも、全くしょうがねえーと思っただけだ。

僕らは麻町の小さなアパートで、まゝごとのような愛の巣にたてこもり、ヴィデオを見たりテレビゲームをしたり、とにかく倖せの絶頂にいた。

麓郷にはたまにしか僕は行かなかった。むしろ結の方が度々通って、父さんに晩飯を作ったりしていた。

二年前おばさんを癌で亡くした中畑のおじさんが、新しい奥さんをもらうことになったと聞いたのは2004年の春先のことだ。そのおじさんの新婚の家を、雪子おばさんの拾ってきた家の隣にやっぱり捨てられてある

 

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ものだけを集めて父さんが作くり始めたらしいという話も、その時一緒に風の便りにきいた。死んだおばさんの遺言の中にあった拾ってきた町という夢みたいな話を、父さんがマジで追っかけているという話にいい加減にしてよと僕らは笑った。

事実を僕が初めて知ったのはコンビニで逢った中畑のおじさんの口からだ。

材木屋をやってるおじさんだったらいつだって新しい材料で新築の家が建てられるのに、おやじがわざわざ拾ってきたもので変てこな家を建てたりしちゃって迷惑してるんじゃないですかと笑ったら中畑のおじさんはしばらく黙りそれから小さな声で怒鳴った。

それは違う!とおじさんは叫んだ。

五郎の建ててるのは俺の家なんかじゃない!あれはお前ら二人の為の家だ!

育ててくれたおやじを、麓郷を、簡単に捨てて出て行ったお前らに、いつかもう一度戻

 

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て来て欲しくて、あいつが黙々と立てている家だ!

あれは、お前ら二人の為の家だ!

 

その晩僕らは月明かりの下で、そっとその家を見に行った。

僕らは口がきけなかった。アパートに帰っても僕らは黙っていた。テレビもつけずに結も僕も泣いた。

父さん!

この二年を僕は今・・・考えています。

結婚の倖せにどっぷりひたり 家庭は僕ら二人っきりのものなのだと次第に思い込んでいた自分。

しかしその間父さんは変わらず 一方通行の無償の愛情を僕らに対してそそいでくれていた。それが僕たちの嘲笑していたあの新しい家だったんですね。・・

 

 

 

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形あるものは、いずれ土に還る日が来る。

でも、あなたは、大勢の人の中で永遠に生き続ける。

たくさんの笑いを、たくさんの涙を、たくさんの感動をありがとう。

 

謹んで田中邦衛さんのご冥福をお祈り申し上げます  合掌